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権利 [その他]

20080322

今読んでいる穂積忠彦さんの日本酒の本の中に、
明治期にお酒の自家醸造を禁止していく経緯に関する下りで、
故ケネディ大統領が提唱した消費者保護の四つの権利に言及しています。
それらは、
「安全を求める権利」
「知らされる権利」
「選ぶ権利」
「意見を聞いてもらう権利」
というもので、更に1975年には
「消費者教育を受ける権利」
が追加され、続いて1980年には、
「生活の基本的ニーズが保障される権利」
「救済を求める権利」
「健康な環境を求める権利」
が加えられ、これらは消費者の8つの権利として、
2000年に制定された日本における消費者基本法の下敷きにもなっています。
(これらは、Wikから引っ張りました)

食の不安が高まる中、ひとつひとつの条項は、
改めて考えるまでもなくとても重要なものばかりです。
最近でこそ、「知らされる」権利は産地表示等の規制を通じて、
保護される様になってはきていますが、
例えばそれらが良いものか、どうかを「教育を受ける」権利として、
身につけられているかといえば、まだまだだと思います。
お酒の場合だと、日本酒でアル添酒だから二日酔いになるとか、
ひどい場合は甲類焼酎はガソリンと同じメチルだとか、
根拠の無い話、デマ話が飛び交います。

穂積さんのこの本では、十数年前のとある料理研究家により、
自家醸造したドブロクからは、麹からアフラトキシンという猛毒が生まれ、
それを飲むと死に至ることもあるといった
無知蒙昧な発言がなされていると指摘しています。
アフラトキシンは10年程前にイラン産のピスタチオから検出され、
それ以外でも、海外産の食品では度々問題になっていますが、
これはドブロク造りに使われる麹、つまりは日本酒造りに用いられる麹黴、
アスペルギルスオリゼーからは、絶対に生産されることはないそうです。

うちの店でも、お客様から、
「身体にいいビールはどれですか?」
等ときかれたりして、非常に困ることがあるのですが、
受け答えとしては、あまり小難しいことをいっても
相手によっては外国語を聞かされている状態になるので、
「身体に良いビールはありません」
「百薬の長とはいいますが、飲み過ぎれば毒です」
「こちらは国産の麦芽を原料にしています」
「あえて言うなら、アルコール度数やカロリーの低いもの」
「これには繊維質が多めに含まれています」
等と言った形で、使い分けしてお答えしています。

身体を悪くするお酒はあったとしても、
決して、身体を良くするお酒は無いと思います。

最初の話、穂積さんの引用は、自家醸造に対するお国の指導方法の
不条理さを指摘するもので、酒税の在り方に疑問を呈するものです。

今の酒税法の基本は、明治期に制定されたものの延長線上にあり、
当時富国強兵の名の下に軍備拡張をはかる政府にとって、
国家予算を組むための安定した財源の確保は急務でした。
いまでこそ、税収の数%程度にまでなった酒税ですが、
(これでも高いと思うのですが)
明治の中頃、日中、日露戦争から、第一時世界大戦の間に、
政府予算の三分の一程度まで占めるようなになっていました。
その頃までに当たり前だった農家における自家醸造は、
衛生面や健康面からというよりも、
掛けれない税金をなくすための禁止事項となっていったようです。
これは現在おいても同じ論理で酒税が捉えられていて、
自家醸造は販売目的でなくても脱税行為となるということなのです。
自分で作って自分で飲まれたら、税金を集めることができませんものね。

ある蔵の年長の杜氏は、利き酒といって盗み酒する蔵人に、
「飲み過ぎたら、脱税だからね。お酒造りはお国のためでもある」
みたいなことをいってたそうですよ。

手造りのパンや御菓子等、家庭での楽しみとしての「手造り」が、
お酒だけは基本的に許されていないのです。
加えて、高額の酒税を掛けられていることを思うと、
腹立たしいばかりなのですが、
税額そのものは購入価格と一緒になっているので、
消費者がそれに対して実感として不満を持つのは難しいですし、
生産者や私たち流通関係者も、価格に転嫁している以上、
結局のところは自己負担でないため、強い反発を覚えることもなく、
逆に免許制度で、飼いならされている部分もあって、
この不条理な税金は残り続けていると言えます。
だって、1リットルで222円も掛けられているビールの税額には、
購入時には更に11円の消費税を掛けているわけですから、
税金に消費税を掛けているいとうおかしな現象です。

これは今のガソリン税の道路特定財源とも重なってくる問題でもありますが、
例えば酒税収入を特定財源として、米農家や葡萄農家への
個別予算として配分されるような事態があると、
族議員やそれに群がる官僚が暗躍、闊歩するんでしょうね。
実際に、小規模な焼酎蔵や日本酒蔵は特別減税の恩恵はうけていますので、
現行税制への不満も、その辺りで押さえ込まれてしまうのかもしれません。

何だか、議論に収拾がないので、この辺りで続きにします。


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