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シグナルとノイズ [利き酒]

~シグナルとノイズ ~

 利き酒という言葉をネット上で調べていて、たまたまとあるブログサイトに辿り着き、シグナルとノイズをいう表現を見つけました。

 もともとS/Nという形で表される通信品質を表した用語で、シグナルとは処理対象の音、ノイズとは意図されない雑音、そのノイズを分母にシグナルを分子に数値化したのがエスエヌ比というもので、数値が大きい程、品質が良いということになります。

 そのブログでは、香りと酸をシグナルに、苦みをノイズにという風に表現していたのですが、香りや酸にも目的とされないものが混じることを考えると、シグナルとノイズという言葉を酒質に置き換えるには、意図されるもの(S)、意図されないもの(N)という表現の方がいいのではと思います。

 例えば、速醸もとを利用して協会9号酵母使用して仕込むといった場合、予想される味わいというものがあるわけですが、それらをS/Nで表した時には、目的とされない雑味が現れればノイズになるわけですし、出来上がったお酒の管理次第でも、ノイズの割合は大きくなるといえます。あるいは活性炭素の使用も、お酒の着色をノイズと考えるあらわれともいえるのではないでしょうか。

 その意味では、鑑評会で目指されるものを中心とした今までのお酒造り、つまりは吟醸酒造りとは、S/Nを大きくすることにあったと思います。また、それがための速醸もとであり、協会酵母でもあるのだと思います。

 ところが反対に、自然に生えてくる乳酸菌を取り込む生もと造り、そして天然酵母の侵入を待つ酵母無添加とは、S/Nにおける分母であるノイズの値が大きくなる可能性が非常に高くなるといえます。生もと系の造りにおいては、乳酸菌の活動前には硝酸還元菌が亜硝酸を生み出しますし、野生酵母の中には必要とされない酵母の活動とそれらが生み出す代謝物や死骸が、出来上がったお酒に様々な影響を与えるといえます。

 しかしながら、感動を与える音楽というものが、単に完璧な演奏と完璧な録音によるものではなく、演奏者の変えることのできない癖や時々の体調によるミスから偶然生まれた違い、あるいは沢山のノイズを含むアナログレコードや、客の立てる声や物の触れ合う音を拾ったライブ音源等が、時としては聴く者の郷愁をそそったり、我々の感性に訴えかけてくることを考えると、お酒造りにおけるノイズの意味を再認識する必要があると思います。





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