SSブログ

菩提もとメモ [雑記]

20090119

菩提もと造りは、奈良県正暦寺を発祥とする僧坊酒の一種です。

何故、岡山県の蔵元である辻本店さんところで造られるようになったのか、
そう言えば、過去に聞いたことがありませんでした。
来月にお伺いするので、忘れずにいたら聞いておきます。

菩提もとは天然の乳酸菌を取り込むところから、
生もと系の酒毋の一種と認識されていますが、
生成された乳酸を取り置き、再び加えることから、
速醸もとに近いとも言われています。
いずれにしろ、結構きわどい造り方で、
7月に辻さん所で、仕込み前の酸っぱくなった水を飲ませていただきましたが、
香りは、古くなった雑巾の搾り水の香りで、
味わいは、少し錆びた鉄分や血のようなニュアンスがあり、甘味はありませんでした。
甘味料の入っていないヨーグルトから分離した液体みたいな感じです。

菩提もと造りに関しては、しっかりとした文献の形で残っています。
室町期の『御酒之日記』と江戸期に書かれた『童蒙酒造記』がそれです。
以下、『童蒙酒造記』からの抜き書きメモです。
まとめただけのものなので、取り立てて面白くはありませんが、参考程度に。

4540960024.jpg

童蒙酒造記第二巻 菩提酛

序文
新酒とは立秋から秋の終わりまでに仕込むお酒。
酛が強く沸くので、弱く仕掛けるのが秘訣である。
掛けは2回が定法で、立冬あたりでは3回にすべきときもある。

菩提性仕込みの方法

菩提性仕込みは「笊籬(いかき)酛」とも呼ばれている。
立秋の頃から残暑の頃まで作れる方法である。
掛けは2回で、泡はまれにしか沸かない。

米の水づけ加減、酸っぱい匂いの米を蒸すこと、
高い温度で掛けること、荒櫂の時期の判断、
以上の4点が特に重要である。

酛米
1斗から3斗まで米を好みで使用し、よく洗い水に漬け、10分の1を飯に炊き、
冷ましきってからざるか袋にいれて、水で洗った残りの米に漬けておく。

米をつける水
米1斗につき水を2斗を加え、これは後で酛水として使用する。
つける期間は、7〜8月で3〜4日。
馴れるのに時間がかかるときは、日当りの良い場所でつけておく。

馴れ具合の見方
ぽつりぽつりと泡が立ち、漬け水の上に銀箔のように白い膜が張ったとき、
指矩(さしがね)で筋を引くとはっきり跡が見えるまでつけておく。
つけすぎることは少ない。

米の蒸し方
ざるの中の飯は別にして、生の米だけを蒸す。
蒸し米は酸っぱい匂いがする。

酛の蒸し米の温度
荒息は4、5回抜くこと。
温度を高めに仕込むのが菩提性である。
次に、先ほどのざるの飯とむらなくかき混ぜる。

酛の麹は、蒸し米の6割を使用する。
掛麹のときも同じである。
水麹は掛の直前に行う。

酛水
酛水は1斗2升水にする。
米をつけた水は、水のうでこして使用する。
米が混じると酒に悪い。

酛の仕込み方
かめに仕込むのがよい。
よくかきまぜ、ふたをして、むしろを欠けて息をこもらせておき、
蒸発させて酸っぱい匂いを抜く。

櫂入れ
晩に仕込んだものを、夜中放置しておき、翌朝にふたを取って見て、
全体がこんもりとなり、真ん中が十文字に割れて、沸く音が聞こえ、
辛い匂いが鼻をつんと突く様になると櫂入れをする。
強弱はあるが、下の方はとろりと沸いている。

7、8月頃は酛の仕込みから14、15時間で、櫂入れとなる。
じっと待たねばならない。
早いうちに櫂をいれると、酛の香りが残ってよくない。

最初の櫂入れから添えをかけるまで、11、12時間から、14、15時間あり、
その間3回程の櫂入れをし、その度にふたやむしろをかぶせること。

添の米洗い
最初の櫂入れの前に洗う。使用する日につけても構わない。

添を掛ける時期
7、8月頃は最初の櫂入れから、醪に辛味と渋味のある時に掛ける。
急いではならない。

添の蒸し米
7、8月頃は人肌くらいで、
残暑の余熱がある季節には、高い温度の蒸し米を仕掛けるのが菩提性の仕込み。
疑って、低い温度で掛けると、酛の香りがのこっていけない。

添の仕込み
小さな桶を使用し、これ以後は汲みたての水を使用する。
桶にふたをしない。

二番掛留の米は、添掛けの前に洗っておく。

二番掛留の時期
7、8月頃は添から11、12時間目に掛ける。
この時醪の表面が2、3分下がるが、
下がるのが見えなくても、掛を遅らせてはならない。
菩提性では、温度を高く仕掛るので、発酵が終了するのが早い。
辛味がつきすぎてから、掛けるのいけない。

二番掛留の蒸米
7、8月頃は冷ましきってから。

二番掛留の桶
1斗の酛につき三尺桶一本くらい。

荒櫂
7、8月頃は掛留から11、12時間目に、醪の表面から一寸くらいに手をかざし、
暖かみを感じられるとき、櫂入れする。
温かみがなくても、14時間目までは遅らせたくない。
高い温度の仕掛けのため、湧きつくのが早いからである。

二番櫂は荒櫂から4時間目、その後は昼に4、5回、夜に2、3回、
一昼夜に6、7回、様子を見て櫂入れする。
菩提性において、7、8月頃は醪蓋が出来ない程度に櫂入れする。
二日二晩ほど、激しく沸いている間はしょっちゅう櫂入れする。
その後は、湧きがおさまるまで時々櫂入れする。

わく音
掛け終わった日はさわさわ、翌日はぶつぶつ、がたがたいう。
強くわき、ガスによって桶の内側が湿り、
醪の表面から7、8寸から1尺くらいまで濡れてきて、
櫂入れするする手元まで温かみが感じられる。
上が下に、下が上になるほどぐらぐら激しくわいても、驚いてはならない。
強くわくため、わきは早くおさまる。

水の加え方
酛水は1斗2升、添水は「当たり」に、
掛留のときに水の総量を「算用」して加えること。
最後、一度に多量の水を加えると、酒の風味が良くない。

酒を一本の桶にまとめること
掛留から3日目の晩にまとめる。
菩提性は高い温度で仕掛けるため、早くわきがおさまる。
酛を数多くつくっても、大桶のまとめてはいけない。
酒に重さがあるから、熱くなり、酒の風味がいやしくなる。
酛が何本あっても、それぞれつくり桶いっぱいにいれておく。

菩提性仕込みは、桶の口に封をしない。
残暑や余気がこもるため、酒の風味がわるくなり、日持ちしない。

上槽の時期
仕込んでからの日数は、7、8月は7日以上12、13日までに上槽する。
残暑と余気のある季節に長い間醪のまま置くと、
桶の周囲から黴がでるものがあり、かびが出たら、
醪蓋を2、3分も取り除くとかびの匂いが消えるので、早く上槽してもよい。

垂り
菩提性の場合、一度にわき上槽が早いためか、
斗水仕込みで垂りはようやく1斗くらい。

おり引き
三尺桶を使用する場合は、上槽してから7日以上たってから。

日持ち
江戸へ出荷してもかまわない。

以上は、片白の場合の教えである。
諸白にするときは、掛留の蒸し米を7、8月頃は酒の燗くらいにすること。
添水は9升とし、掛留のさいの水は「算用」にして加えること。
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0