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静岡の二 [日誌]

20120311

正雪

静岡県静岡市清水区由比


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 続いて同じ由比の街にあり海沿いに建つ蔵元、神沢川酒造場さんへと向かいました。

 雄町米で仕込んだもろみが元気に湧いています。


 
 初めての訪問にも関わらず社長の望月さんが暖かく出迎えてくれました。仕込場を通り抜けた奥には趣のある日本家屋があり、中の応接室にて静岡酒談義が始まります。

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 吟醸王国と呼ばれる静岡酒の特徴は、先ず以て静岡酵母の存在が大きく語られます。社長の望月さんはそのこと自体は否定はしませんがと前置きをして、もっと造り全般に渡って静岡のお酒らしいスタイルが形成されていると考えているとお話をされます。そして、話の端緒は河村伝兵衛先生という県の技術指導センターの研究者、今の静岡酒の父とも呼ぶべき存在の方の逸話から始まります。
 20年程前に河村先生が各蔵元へ指導をしていたのですが、当時は研究所にとどまること無く常に蔵元に出向き、現場での指導やその観察を記録し、時には蔵元へ寝泊まりしながら今の静岡酒の礎となるものを形作っていきました。しばしば蔵での朝ご飯を一緒に食べることが多かったそうです。その際に、最初から河村先生の中でこうすれば美味しいものができるという確固としたものがあったというよりも、静岡県内にある各蔵元を回り様々なデータを収集して行く上で、良いお酒とは何か、あるいは静岡酒らしいお酒とはどうあるべきかという理想が少しづつ輪郭を整え、最終的に静岡酵母の分離という形で結実を見ることになったと考えるべきですと望月さんは仰ります。
 その静岡酵母自体は年毎に県で頒布されてはいますが、当初に分離されたものとは世代交代を経て幾分か違ったものに変異していると考えられ、正雪さんでは自社での培養を通じて出来るだけ前の年からの変化の少ない株を使用しているそうです。また、静岡酵母単独ではなく10号系酵母と合わせて使うことで、狙った酒質設計を効果的に達成できるようにしています。その際にも酒母立てそのものは酵母別に行い、仕込の時になって合わせて使うようにしているということです。微生物の遷移を考えるとこの方が確かに理に叶っているのかもしれません。

 話は尽きないというところでしたが、既にこの場所での話に一時間以上過ごしていましたので、仕込蔵を案内していただきました。

 ここ正雪さんでもそうなのですが、美味しいお酒を生み出すための第一条件として、良い麹であることを上げられています。そのためには原料処理の善し悪しが左右するということで、洗米や浸漬も丁寧にしっかりと行われています。
 
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 こちらは何と直火釜の甑です。釜の回りはコンクリートで固められていますが、火が出ている回りは耐熱性の高いセラミックコーティングした煉瓦で囲われています。毎年のメンテナンスでは、このコンクリートを割って釜を取り出し、痛んだ部分を修復します。作業そのものはそれほど大変ではないそうですが、近年は煉瓦職人さんが減っていて煉瓦を手に入れること自体が難しくなっているそうです。

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 麹室にも案内していただきました。意外に低めの体感温度でした。やはり長めの三日麹です。

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 使うお米は、山田錦や雄町米を始め、愛山あるいは山田穂等も用います。
 先ほども触れましたが、仕込で酵母を併用する場合でもモト立ては別々に行うということで、例えば10号と9号の酵母をそれぞれ酒母として興し、使う段になって所定の醪量に合わせて混ぜるそうで、変則的な二個モトみたいなものでしょうか。


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 こちらは別棟にある吟醸蔵です。部屋自体も温度管理されておりサーマルタンクが3本並んでいます。温暖な気候の静岡ですので、その辺りの設備は徹底しています。
 隣は瓶燗する機械です。

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 何とここでも色々と話が盛り上がり、蔵にきて2時間以上が経過しています。まともな利き酒も出来ず蔵を発つことになりました。
 この後は同じ静岡県内を新幹線で移動です。

 望月さま、仕込でお忙しい中を有り難うございました。

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 神沢川酒造場さんのお酒の取り扱いは現在交渉中です。
 うちの子になってくれると良いのになぁ。



                 
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